【完結】無口な王子様



「粉類ふるいにかける」


あれなんか周りに飛んで粉だらけになってるし。


「オーブンを温めておいてね」


これくらいならできる!


「チョコとバターを湯煎にかけて溶かし、生クリームと卵黄を加えて混ぜる」


ゆっくりと溶けていくチョコとバターを見つめた。


チョコとバターのマーブル模様がやけにきれいに思えた。


ぼーっと考えていたら、手を滑らしそうになってるし!


「奈緒!よそ見しない!」


「は、はい」


性格変わってきてるし・・・・。


「卵白に砂糖を加え、ハンドミキサーでつのが立つまで泡立てる」


つの?


私は全く想像が出来なかったが、ミキサーで混ぜるうちに、真っ白いフワフワした物質になった。


「これくらい?」


「う〜ん。もうちょっとかな?」


こんな感じでケーキ作りは進み、後は焼くだけ。


焼けるまでの間、私たちは片付けをし、休憩することになった。


「奈緒、がんばったね!」


沙知が優しい笑顔で優しい言葉を掛けてくれた。理香のトリュフも知らないうちに出来上がっていた。


「私はね、毎年沙知に手伝ってもらって作ってたんやけど、やっと一人で作れるようになったんよ」


理香も嬉しそうに話す。


理香と木下くんは中学の時から付き合ってるから、もう3年近くなるみたい。


今でもラブラブな二人が羨ましい。


ケーキが焼ける甘い匂いと共に、理香の甘い話を聞いた。


ケーキが焼き終わり、恐る恐るオーブンを開けて、みんなで中を覗く。


「うまく出来てるみたいやね」


沙知が嬉しそうに言ってくれた。


「よかった〜」


私の不安が喜びに変わった。


「奈緒、どれくらい渡すの?」


沙知が聞いてきた言葉が理解できなかった。


「どれくらいって?」


「あんた、このまま渡す気?」


理香が、眉をひそめて聞いてきた。


「うん」


「はぁ?これをそのまま渡したら、嫌がらせやで」


沙知たちがそう言うのもそのはず、私が作ったのは、直径15cmのケーキ。


普通なら一人で食べるのはきつい量。


沙知たちは、圭が甘いものが好きなこと知らない。


「嫌がらせ・・・」


甘いものが好きってことを何度言おうか迷ったけど、あれは私の中だけの圭にしたかったから、黙っていた。


「・・・・まあ、量は奈緒が決めたらいいよ」

「うん」


私は静かに頷く。


私の気持ちは決まっていた。


圭にいっぱい私が作ったケーキを味わって欲しい。


ケーキと共に膨らんだ私の気持ちも受け取って欲しい。


< 24 / 52 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop