私の師匠は沖田総司です【上】
師匠との間に大きな壁が見えた気がした。

私は昔より強くなった。稽古も毎日欠かさずやっている。努力もしている。……でも、師匠の足元には全く及ばない。

これが新選組で最強と謳われた人の実力。

今日、三段突きが成功して少しでも師匠と肩を並べられると思った。

でも、それは違った。

師匠の刀には私には無い何かがある気がする。

今の私には絶対に手に入らない様な何か……。

柔らかな風が頬を掠める。風が吹くたびに庭に咲いている桜の花びらがヒラヒラと舞う。

私は……もっと強くなりたい。そして、師匠に見合う弟子になりたい。

それが10年間私に剣術の指南をしてくれた師匠に対しての恩返しになると思うんだ。

『蒼蝶』

「はい、師匠」

名前を呼ばれ、師匠の方を見る。

師匠は私を静かな目でじっと見つめていた。

どうしたんだろう、と思っていると師匠が重い口を開いた。

『過去に行って、僕の未来を変えて欲しいって言ったらどう思う?』
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