私の師匠は沖田総司です【上】
その後、新選組の情報が得られないまま時間だけが過ぎた。

お腹が空いた私は懐に僅かにあったお金を使って蕎麦を食べていた。

お金は師匠からのもうひとつの贈り物だ。

でも、このお金ではおそらく長くはもたないだろう。早く新選組の屯所を見つけなければならない。

ズルズルと麺を啜っていると、隣に男性が座った。

その人の腰には大小の刀が差してある。そしてそれらの刀を右に差していた。

右に刀を差しているってことは左利きってことだよね。

珍しいな。

そう思ってじっと腰に差してあった刀を見ていると「おい」と声をかけられた。

「俺に何か用か」

「あっ、いえ、何でもありません」

すぐに視線を逸らした。

でも右差しの男性は私をじっと見つめていた。静かな目をした人だ。そして爽やかイケメンの分類の顔。

全体的に細身の体をしているが、無駄のない筋肉をしている。手を見れば竹刀ダコができていた。

剣術を毎日欠かさず稽古をしているのだとすぐに分かる。

私の時代なら女の子がキャーキャー言っているはずだ。

「……アンタは武士か?」

「へ?」

突然右差しの男性に話しかけられてマヌケな声が出てしまった。
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