私の師匠は沖田総司です【上】
勇猛果敢に立ち向かったのは良いですが、私はすぐに叩きのめされてしまいました。

沖田組長に「弱すぎて相手にもならない。女の子の天宮さんより弱いって、どういうことなの?」と屈辱的な言葉を頂き私の稽古は終了します。

「今日の稽古は終わり。君達も天宮さんと山野君を見習いなよ」

そう言って沖田組長は道場を出て行った。

「山野さん、大丈夫ですか?」

「ははは、貴女に比べたら私のなんて大した怪我じゃありません。それよりも私、沖田組長に全く歯が立ちませんでした」

「じゃあ、次頑張りましょう」

「次……ですか?」

今まで沖田組長に負けても、仲間からは「もう諦めろ。あの人には絶対に勝てないんだ」としか言われなかった。

だから天宮さんの言葉が新鮮で思わず驚いてしまう。

「私が……、沖田組長に勝てると思いますか?」

「どうですかね。山野さんの頑張り次第では、勝てるかもしれませんよ」

“はい”でも“いいえ”でもない答えが返ってくる。

諦めの言葉しか言われなかった私にとってそれは、とても心が温まる言葉だった。

「ありがとうございます。私、これからも頑張ってみます」

「はい!一緒に頑張りましょう!」

私は差し出された自分よりも小さな手を握った。
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