私の師匠は沖田総司です【上】
「その時、天宮の周りには死体が転がってたんだろ。それをおまえと斎藤に見られたんだ。
誤魔化せねと思ったから手紙を俺達に渡した。……そうなると、総司たちが言っていた、天宮のもう一つの人格、蒼夜叉も天宮の演技だったのかもな。
人を殺し慣れてるのを知られない為に、別の人格があると言った。その後の状態も全部演技だったなら相当な女だ。俺もすっかり騙されたな」
そう言って土方さんは笑っていたけど、その表情はどこか悲しそうに見えた。
土方さんだって本当な天宮さんが間者だって思いたくないんだ。
でも、鬼の副長として信じきることができない。
だから僕が何を言っても土方さんは聞く耳をもたない。
くそっ、土方さんってどうしてこうも頭が固いんだ。まだ辛うじて二十代のくせに頭は頑固おやじみたいだ。
「土方副長」
僕が拳を握りしめていると隣に座っていた一君が言った。
「なんだ斎藤」
「おそらく蒼夜叉は別人格と考えて良いでしょう」
土方さんの片眉がピクリと動く。
「あの時の天宮は自分のことを僕と言っていました。そして俺のことを一君と呼びました。口調もいつもの落ち着いた感じではなく、人を小馬鹿にするような陽気なもので……まるで総司のような感じでした」
ちょっと一君、僕に例えるのはやめてよ。
それに僕は人を小馬鹿にするような口調なんかしてないよ。
誤魔化せねと思ったから手紙を俺達に渡した。……そうなると、総司たちが言っていた、天宮のもう一つの人格、蒼夜叉も天宮の演技だったのかもな。
人を殺し慣れてるのを知られない為に、別の人格があると言った。その後の状態も全部演技だったなら相当な女だ。俺もすっかり騙されたな」
そう言って土方さんは笑っていたけど、その表情はどこか悲しそうに見えた。
土方さんだって本当な天宮さんが間者だって思いたくないんだ。
でも、鬼の副長として信じきることができない。
だから僕が何を言っても土方さんは聞く耳をもたない。
くそっ、土方さんってどうしてこうも頭が固いんだ。まだ辛うじて二十代のくせに頭は頑固おやじみたいだ。
「土方副長」
僕が拳を握りしめていると隣に座っていた一君が言った。
「なんだ斎藤」
「おそらく蒼夜叉は別人格と考えて良いでしょう」
土方さんの片眉がピクリと動く。
「あの時の天宮は自分のことを僕と言っていました。そして俺のことを一君と呼びました。口調もいつもの落ち着いた感じではなく、人を小馬鹿にするような陽気なもので……まるで総司のような感じでした」
ちょっと一君、僕に例えるのはやめてよ。
それに僕は人を小馬鹿にするような口調なんかしてないよ。