私の師匠は沖田総司です【上】
沖田総司

新選組1番隊の組長をしている仲間の名前だ。

天宮の構えは総司と全く同じだった。

たまたま総司と同じなのだろうか。だが、偶然にしては総司と似すぎている。

驚く俺と副長に目もくれず、天宮は何かを計っていた。そして、足に力を込めると一気に前に出る。

その動きでさえも総司と重なっていた。

そして、副長の鳩尾に向かって風を斬る音と共に、鋭い突きが放たれる。

「くっ!」

副長は顔を歪めながらも、その一撃を躱す。だが、天宮の攻撃は終わらなかった。

立て続けにもう一段の突きが胸に襲い掛かる。

まさか天宮は三段突きをするつもりなのか?

総司にしかできないといわれる三段突きを。

副長は寸でのところで天宮の二撃目の突きを防ぐが、体勢を崩してしまう。

体勢を崩した副長に向かって、天宮は歯を喰いしばりながら副長の喉元に木刀を突き出した。

だが、突然天宮の体がグラッと傾き最後の突きは喉元ではなく副長の腕に伸びる。

天宮に一瞬の隙ができた。

バンッ!

鈍い音と共に天宮の体が道場の壁に叩き付けられる。

「っあ゛、ぐ……っ……」

「天宮!」

肩を押さえ低く呻く天宮に駆け寄る。少し動かしただけで天宮小さな悲鳴を上げた。

「斎藤、すまねえが山崎を呼んでくれ」

副長も二の腕の辺りを押さえている。あそこは天宮が最後の突きを繰り出した場所だ。

どうやら副長は天宮の攻撃を受けてから反撃をしたらしい。

「分かりました。すぐに呼んできます」

俺は急いで道場から出た。
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