私の師匠は沖田総司です【上】
広間へ行くと、正装した山南さんと席に座る近藤さんたちの姿がありました。
明里さんが山南さんの隣に座ると静かに祝言が行われる。
川が流れるように穏やかに行われる式。
山南さんと明里さんはとても幸せそうです。
私はそんな二人を見ながら、師匠にもこの光景を見せてあげたいと思っていました。
祝言を終えると宴会が行われました。
近藤さんや土方さん、色々な人たちが二人にお祝いの言葉を掛けています。
私も二人のお祝いの言葉を掛けた後、隙を見て少しだけ庭に出ました。
草履を足に引っ掛け、足跡一つないまっさらな雪の上を歩くと、グッグッと雪を踏みしめる音がする。
部屋から聞こえる笑い声と雪を踏みしめる音、そしてときおり、ドサッと枝が雪を振り落す音を聞きながら庭を歩きました。
井戸がある場所まで来ると、立ち止まり、冷たくなった指先に白い息を吹きかける。
空を仰ぐと鼠色の空から大粒の淡雪が降っていました。
淡雪が頬に落ち、体温で溶けて涙の様に頬から滑り落ちる。
「師匠」
白い息と共に師匠の名前を呼びました。
現代にいる時、師匠はすぐ私の所に来てくれましたよね。
……でも、今は誰も来てくれません。
辺りを見回しても白い世界が広がるだけ。
胸に寂しさを感じながら私は目を閉じて、心の中で師匠に呼びかけました。