君と願ったたった一つのもの


「じゃあ、今日はありがとう」





「いえ。佐野先輩、気をつけて帰ってくださいね」





「ありがとう」





私は佐野先輩を玄関までお見送りして再び自分の部屋に戻った。






するといっとき経って






コンコン。






ドアの方から音がなる。






「はーい」






きっとお母さんだろう。






私は部屋のドアを開ける。






「なにー⁇」






「…あの人は、帰ったの⁇」






お母さんはなぜか、声が震えていた。






「帰ったよ⁇どうかしたの⁇」





なんでそんなに、声が掠れてるの⁇






「…美来」





「ん⁇」





「さっきの人、同じ学校⁇」






「え、そうだよ⁇」





「最近よく一緒にいるの⁇」






「うん。あの人ね、私が傘を忘れて困ってた時ね、傘を貸してくれたの」




「そっか」





「てか…それがどうかした⁇」





「うんうん、ただ気になっただけ」






そっ、か…。






「そう言えばお母さん。知ってる人に似てるって…」





「それも気のせいね」





「…」





「ご飯の準備、出来てるから早く着替えなさいね」





「はーいっ」






私は元気良く、お母さんに返事をした。


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