そこにいる
菜都が亡くなった次の日、あの男は僕の部屋のステレオに、声を飛ばしてきた。

いつも通り、勝者と敗者の報告が終わると、言葉を付け加えた。


「ところで・・なぜ・・あの言葉がNGワードに選ばれたのかお分かりですか?」


ステレオのスピーカーから出される男の声は、低音が響いていた。



「・・・・別に・・知りたくもない・・」



「そうですか。

でも、せっかくなのでお伝えしておきますね。

人類はこれまで様々な『縁』によって繁栄して参りました。

それが個人にとって『良縁』『悪縁』いずれにしてもです。

それが『因縁』と言われるモノです。

この『縁』とは、人類を発展させてきたキーポイントでもあります。

しかし、最近の先進国はどうでしょう。

まるで自分1人で生きているような顔をして、自分の好みの人間だけが居ればそれで世界は回っているとでも思っていらっしゃる。」



「ただの、偏見だよ・・」



「いいえ、アナタはそれをよく知っている。

だって・・目の前で大切な人が亡くなったのですからね。

でも、お約束通り私はまだ、あなたの一番大切なご家族や2番目に大事とおっしゃったお友達は頂戴しておりません。

私は善意を持って、皆さんに接しているのですよ。」



「もう・・聞きたくない!」



僕は耳を塞いだ。



「ご自分が大切なモノだけを守ればそれでいいのですか?

自分の周りの人間だけが、自分を生かしているワケではないのですよ。」



「そんな事は、分かってる!!」



「まぁ、アナタが分かっていらしても、アナタの恋人は分かってはいらっしゃらなかったみたいですからね。

簡単に『関係ナイ』なんておっしゃっていましたから。」



「うるさいっ!!」


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