初めての恋はあなたと。 「その後」を追加しました
「12時を少し回ったぐらいか」


その時間ならまだ電車は残っている。
このままお邪魔しているのも、なんだか気が引けてしまう。

そう思った私は、酔いが残る体を必死で我慢して立ち上がった。


「千夏?」

「あ、あの、連れて来ていただいてありがとうございました。私そろそろ帰ります」


ぺこりとお辞儀して扉へ向かおうとした。
が、行けなかった。
なぜなら江崎課長に腕を掴まれてしまったからだ。


「あのっ」

「こんな時間に一人で帰すわけがないだろう」


振り返ると、少し不機嫌そうな江崎課長の顔があった。
怒っているといえばそうではなく、子供が拗ねたみたいな…。
とにかくあの仕事中の顔からは絶対想像できない。


「でも電車もありますし、このままここにいるのは迷惑かなって…」

「誰も迷惑だなんて言っていない。それにまだ完全に酔いが醒めていないだろう?」

「で、でも普通に歩けますし…」


確かに完全に酔いが醒めたわけではない。しかし、電車に乗るぐらいはできるはずだ。
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