君の名を呼んで
私はぽかんと口を開けたままでいて、途中でハッと気がつき、彼の言葉を否定する。

「嘘、そんなの無理だよ。桜里はトップモデルでしょ。それに私だって仕事があるし、皇がーー」

「君と居たい」

桜里は真剣そのものの眼差しで、更に私を抱きしめた。
私は混乱したまま、悲鳴のような言葉を浴びせかける。


「ズルいよ!一番傍に居て欲しかった時には居なかったくせに!仕事を取ったくせにーー」

私はその腕から逃れようと、身をよじる。


専属モデルになるために、一人で海外に行ってしまった桜里。
私のことなんて、振り返りもしなかったくせに。


「確かに僕は最低だよ。あの時は君の想いに応えなかった。だけど、君と離れてから、一日たりとも君を忘れたことなんてない」


桜里の言葉は、私には優しすぎて。
私が負った傷なんて、包み隠してしまうほどに。

お願いだから、私を揺るがさないで。


皇。


何故か彼の顔が浮かんで、涙が零れた。


「雪姫、君を愛してる。一緒にイギリスで暮らそう」


その言葉に、私の腕から力が抜けていった……。
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