君の名を呼んで
その必要はない

今日の私は城ノ内副社長とパーティーに来ていた。
あるベストセラーが映画化することになり、そのキャストに朔とすずが抜擢されたため。
制作発表と顔合わせを兼ねて開かれたパーティのため、会場になったホテルの宴会場には、たくさんの有名人やらお偉方が集まって、それぞれに歓談している。

原作者へ挨拶を終えて、一息ついた私に、副社長が笑った。
すずと朔はインタビューを受けているから、今のうちにちょっとだけ休憩。

「お前案外ビビリだよな」

「うぅ、胃が痛いです……」

その時、私をすり抜けて城ノ内副社長に飛びついた、黒髪の女性。

「皇!」

「舞華」

……舞華さん?


「私も出るのよ。よろしくね」

そう言う彼女は、真っ直ぐに副社長を見上げて。
キラキラした目でにっこり微笑んだ。
私なんて目に入らない様子。うーん、さすがだ。

「いっそのこと皇のプロダクションに入れてくれればいいのに」

「お前は俺相手だと甘ったれるから駄目」

その親しげな雰囲気は、やっぱり私には少しキツい。
目をそらしかけた、その時――。


「コウ……?コウじゃないか、モデルの」


不意に掛けられた声は、スーツの男性からのもの。
名刺を入れたネームプレートには、有名な出版社の名前があった。

「いや懐かしいな、昔君の載った雑誌を扱ったことが」

「――失礼ですが、人違いです」


冷たく遮って。


城ノ内副社長はハッキリわかるほど顔色を変えて、鋭い目線でそう返すと、身を翻した。
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