君の名を呼んで
決めるのは俺だ

何日かの休養をもらった後に、私は無事に仕事に復帰し、今日は朔の初主演映画の初号試写――。
スタッフとキャスト、関係者だけの試写とはいえ、私は緊張しまくり。

「やっと完成、だね」

隣に座る朔を見たなら、彼はにっこり微笑んで私を見た。

「雪姫に観てもらいたかったから、一緒に来られて良かったよ」

さりげなく手を重ねられて、ちょっぴりドキッとしてしまったなら。

『ガン!』

後ろから朔の座席を蹴る男性。

「……ガラ悪いですよ、城ノ内さん」

朔が振り返ってたしなめた。


「ああ悪かったな。脚が長いもので」

当の本人は全く堪える様子がない。
……ここ、試写室なんですけど!!
幸い彼の周りは空いていて、誰にも気付かれなかったようだけど、うちの会社の評判落としたらどうしてくれるんだ。

更に城ノ内副社長は私に顎で命令。

「雪姫、こっちに来い」

自分の隣を指す。

「え、え?」

「馬鹿、そんなド真ん中の良い席は、主演の朔と監督の席だ」

あ、ああそういうことか。
びっくりした、嫉妬かと思っちゃった……。
朔が笑いを堪えているのが妙に気になるけど。

私はそそくさと城ノ内副社長の隣に移動した。


「では始めまーす!」


担当プロデューサーの挨拶と共に、照明が落とされる。
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