冷徹御曹司は政略妻の初めてを奪う



その反面。

私を甘やかし、優しくて、そこまで私との結婚を楽しみにして、会う度に私を抱きしめて深いキスをするくせに、どうして彼はそれ以上を求めようとしないんだろうかと。

そんな不安がつきまとって仕方がない。

お見合いで会ってから、まだ3か月程度。

そう考えればそういうものかな、と思うけれど、決して私を抱こうとしない紬さんへの不安は日増しに大きくなっていく。

会社から新居に帰り、誰もいない広すぎる部屋に一人でいると、更にその不安は強くなる。

入籍も済ませ、紬さんから逃げられる状況ではないのに、部屋に一人でいると寂しくて不安で、今の状況をリセットしたくなる。

お見合いで抱いた紬さんに対する印象は、女性からの誘いが絶えない高慢な男。

お見合いの席に飛び込んできた理美さんという女性だって、紬さんとは深い付き合いがあるようだし。

今は私以外には誰もいないと言ってくれるけれど、だからと言って過去が気にならないわけでもないし。

複雑な心境は隠せない。

自分の人生に結婚というものをを具体的に考えていなかった私は、相手が紬さんに限らずお見合いを進めるつもりはなかったのに、結局は入籍も済ませ、結婚式を控えて新居に座り込んでいる。

新築の部屋には傷一つなく、生活感も何もない。

私が運び入れた荷物はそれほど多くはなくて、殆どの家具は紬さんが選んだもの。

私が好きな木目調をメインに、それほど個性を主張しないインテリアからは彼の趣味の良さが感じられて嬉しくもある。

寝室のベッドはキングサイズで、二人で寝てもかなり余裕がありそうだ。

これからふたりでこの部屋で暮らし、一緒に眠るキングサイズは、二人の距離を縮めてくれるのだろうか。

それとも相変わらず、私を求めることはないのかな……。



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