夏恋
ガラガラガラ…
裕也は窓を開ける。まだ肌寒い春の夜風が裕也の部屋に懐かしい空気を運び込む。
「…遅いよ」
裕也は彩を見た。…彩? 彩は一人の女性になっていた。少女の頃だけしか見ていなかった彩は裕也の想像を絶するほど大人に、綺麗になっていた。都会にいただけあって垢抜けている…裕也は我に返るには数秒掛かった。 そうだ。風呂場で練習したようにまずはあの言葉を掛けなくちゃ。
「…おかえり」
その言葉で彩は表情を緩め、ホッとしたように返事を返した。
「…ただいま」
あのときと同じように星空が二人を照らしていた。
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