夏恋
ある晩、裕也は例によって彩の部屋の窓を叩いた。
「コンコン…」
しばらくして彩が窓を開ける。
「なぁに?」
「おう、今日はちょっと頼みがあってな」
「この後課題やらないといけないから、手短によろしく」
「そっか…実はな、ウチのサッカー部マネージャーが辞めちゃってさ…何人か希望者はいたんだけど、ちょっとハード過ぎてすぐ辞めちゃうんだよ。だからお前にちょっとやってもらいたいなと思って…」
最後の方は俯きながら小声になってしまう。
「そんなにハードなの?私だって務まらないよ?」
「いや、やってみて辞めたかったら辞めていいから。今大事な時だし、マネージャーいないと困るんだよ。」
「…う~ん、どうしょうかな~」
「頼むよ。お前もサッカーには詳しいし」
「仕方ない、やってあげるよ。その代わりこっちもお願いがあるんだけど」
「マヂか!ありがとう。で、そのお願いって?」
彩は背後の床にある段ボールを指差した。
「まだ引っ越しの片付け出来てないからさ。手伝ってよ。」
「えぇ~、面倒くさ」
「じゃあマネージャーやらない!」
「分かったよ、手伝うから。」
「おっけい!じゃよろしくね~」
彩は指でOKマークを作り、窓を閉めた。
「なんか、微妙な感じになっちゃったな…」
裕也はその場に寝転がると、いつのまにか眠ってしまった。
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