光のもとでⅡ
「――い。翠?」
 ツカサに声をかけられはっとする。
「黙り込むほど反省してくれなくていいんだけど……」
「あ、うん。ごめん……」
 色々な意味で……。
「……俺も、兄さんたちに話したからお互い様」
「……え?」
 思わぬ言葉にツカサを見上げる。
 湊先生と静さんが結婚してからも、ツカサが静さんを「義兄さん」と呼ぶことはない。つまり、「兄さん」と言うからには楓先生に話したのだろう。でも――ツカサが話したの? ツカサが……? 本当に……?
 あまりにも食い入るように見すぎただろうか。
 ツカサは決まり悪そうに顔を逸らした。
「昨日、翠を見送ったあと兄さんが帰ってきたんだ。その場で少し話して、誘われたから夕飯にお邪魔した」
 ツカサは話しづらそうに言葉を続ける。
「もし、兄さんが俺と同じ立場だったらどうするのか、聞いた。それから、翠が昨日言ったこと。……何を思って口にした言葉なのか、義姉さんの解釈を教えてもらった」
 不器用に並べられる言葉に、いつもより言葉数の多いツカサに、胸がじんわりとあたたかくなる。
 基本、自分のことを人に話す人ではない。そんなツカサが人に相談するのはどれほどハードルが高かったことだろう。さらには、人に相談したことを私に話すことにだって抵抗があるはずで……。
 何よりも、別れたあとも気にかけてくれていたことが嬉しいし、写真を撮らせてもらえることに舞い上がっていた自分が申し訳なく思えてくる。
 視線が足元に落ちそうになったそのとき、
「たぶんこれからも、何かにつけて『価値観の差』は出てくると思う。そのたびに翠を傷つけるかもしれない。でも、傷つけようと思って傷つけてるわけじゃないから、それはわかっていてほしい。それから――」
 言葉に詰まったツカサは、言おうかどうしようか躊躇っているのが見て取れた。
< 1,007 / 1,333 >

この作品をシェア

pagetop