光のもとでⅡ
 またしてもメガネなしの姿。
 メガネをかけていないツカサを見たのは何回目だろう。たぶん数え切れる程度だ。
 ほかの女の子たちの目にも新鮮に映っているのかもしれない。
 近くで騒ぐ女の子たちに視線を向けたけれど、ツカサが競技に出る際静かだったためしなどなく、今もうるさいくらいの歓声が起こっている。
「盛り上がっている」といえば聞こえはいいけれど、甲高い声の集合体に頭がくらくらしてくる。
 桜林館左側には朝陽先輩ファンが集い、右側にはツカサファンが群がる。
 フロアに下りて観戦している人もいれば、ほかの組の観覧席であるにも関わらず、手すり沿いの通路を埋め尽くす勢いで女の子たちが集まってきていた。
 かくいう私たちは、自組に割り当てられた観覧席の手すり沿いに並び階下フロアを見下ろしている。
 ツカサの試合が始まるなり、
「憎たらしい……。あの男、合気道を始めた頃から身体捌きがきれいだったのよね」
 桃華さんはぞんざいな視線を送りつつもそんな言葉を漏らす。
 でも、桃華さんがそう言う気持ちもわからなくはない。
 技やルールは知らないけれど、ツカサの動きはとてもきれいだと思うから。
 流れるような動作は「洗練されている」という言葉が妙にしっくりくる。
 弓を持ったツカサを初めて見たときにも美しすぎる所作に釘付けになった。
 もっとも、所作の美しさは弓道や合気道に留まらない。
 ワルツを躍らせれば優雅だし、食事の際の箸使いもきれいなら、口を開く様まで美しい。
 焼き魚を食べているところは見たことがないけれど、ツカサのことだ。魚の骨を芸術品か何かのようにお皿に残すに違いない。
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