光のもとでⅡ
「姫がそれを受け入れるなら学校謹慎で済み記録には残らない。ただし、姫が謝罪を受け入れない場合は即座に停学処分が確定する」
「そんなのっ、受けるに決まってますっ」
「そっ、なら良かったわ。謝罪の場が決まったら連絡するわね」
「はい……」
 どうしよう、泣きそうだ……。
 すると、ツカサの手が伸びてきた。
 ふわりと抱えられ、スタスタと歩いてステージ裏へと通じるドアの前で下ろされる。
「ツカサ……?」
「泣き顔、人に見られたくないんじゃないかと思って」
 そう言ってステージ裏へ通じるドアを開けてくれた。
「あり、がと……」
 ドアが閉まればフロアで聞こえている音がほんの少し篭って聞こえる。
 そんな変化を感じつつ、涙が零れる。涙はポタポタ、と暗い足元へ落ちていった。
「翠が泣く必要はないと思うけど?」
 言いながらハンカチで涙を拭ってくれ、そのまま何も言わずに抱きしめてくれた。
 そうしてカントリーダンスが終わるまで、私はツカサの胸で泣いた。
 その間中、「翠は被害者であって、翠が罪悪感に駆られることはない」とツカサはずっと宥め続けてくれていた。

 テンポの速いワルツが流れ始め、
「これの次、スローワルツが流れるけどどうする?」
「……踊りたい。だって、せっかくダンスを踊れるようになったんだもの。でも――」
 観覧席にいる三人の前で踊る気分にはなれなかった。
 その人たちが罰を受けるのは自業自得だとしても、こんなにも重い処罰が下されるのなら、私がペナルティを決める必要なんてなかった。どうしたって後ろ暗い気持ちになる。
 そんな気持ちを悟ってくれたのだろう。
「踊るだけならフロアに出る必要はないだろ? ここでだって十分に踊れる。でも、足は?」
「痛い……。でも、痛い思いをしたのだから、やっぱり踊りたい」
「本当、負けず嫌いにもほどがある。今無理しなくても、ダンスが踊りたいならいつだって付き合うのに」
「……ちゃんと正装してくれる?」
「そこ重要?」
「私にとっては……」
「……翠もドレスを着るなら考えなくはない」
 そんな話をしながら立ち上がり、ドレスのスカートを整えてツカサに向き直る。
 わざとらしくも恭しく礼をすれば、聴き馴染みのある曲が流れ出した。
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