光のもとでⅡ
 深呼吸を何度か繰り返し、脳へ酸素供給を試みる。
「……今まではね、手をつないだりすると、嬉しかったり安心感を得られるだけだったの。でも、それとは違う感覚があったというか……」
 これじゃだめ。具体的な説明がなされていないから、及第点すらもらえる気がしない。
「……たとえば、言い合いをしたあとに手をつないだり、ツカサの身体に触れると、気持ちがしゅわってなる」
 これもだめかな……?
 ツカサの表情をうかがい見ると、無表情に拍車がかかったような様で見返されていた。
 この表情は「理解不能」だろうか。
 どうしよう、これ以上の説明って何っ!?
「しゅわ……?」
 あれ……? 食いついてくれた……?
 でも、「しゅわっ」を掘り下げるのってどうしたらいいんだろう……。
「えぇとね、入浴剤の塊が、お湯に溶けてなくなるみたいな感じ。心がしゅわってなる。昨日もそうだったの。帰宅する直前、ちょっと言い合いになっちゃったけど、でも、ツカサに触れたらしゅわって……音を立てて心が軽くなったような気がしたの」
 あのときツカサは何を感じただろう。
 何か感じたかな……。それとも、何も感じなかった……?
 そろりそろりとツカサを見ると、ツカサは顔を真っ赤にしてそっぽを向いていた。
 ちょっと待って……。なけなしのたとえを披露したのは私だし、恥ずかしい思いをしたのも私のはずなのに、どうしてツカサが赤面して顔背けるのっ!?
「もうっ、ツカサが話せって言ったから話したのに、無言とか顔背けるとかひどいっ」
 ツカサは赤面したまま小さく口を開き、
「わからなくはない」
 せっかく同意を得られたのに、互いに赤面してしまった私たちは、恥ずかしさのあまり、これ以上のこの会話を続行することができなかった。
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