光のもとでⅡ
 どうしよう、嬉しい……。
「好き」と言ってもらえることがこんなに嬉しいことだとは思いもしなかった。
 真っ赤になっているツカサを目の前にしても、何も考えられないくらい嬉しい。
「そんなに見るな」
 そうは言われても……。
「嬉しい……すごく、嬉しい。初めて……初めて言ってくれたよね?」
 あまりにも嬉しくて、抑えても抑えても声が弾んでしまう。それに反して、ツカサはものすごく決まり悪そうな表情だ。
「悪い、今まで言えなくて……」
 確かに、今まで一度も聞いたことはない。何か理由があるのかな、と思ったこともあるけれど、それを尋ねる勇気はなく……。
 今なら訊けるだろうか。教えてもらえる、かな……?
「どうして、って……訊いてもいい?」
 そっとツカサを見上げると、ツカサが奥歯に力をこめたのがわかった。
「あのっ、言いたくなければいいのっ」
 慌てて口にしたけれど、それまで以上の強さで抱きしめられる。
 抱きすくめられた状態で、
「『好き』じゃ足りない気がしてた」
 え……?
「……自分の気持ちを伝えるのに、『好き』って言葉じゃ足りない気がした。『愛してる』って言葉もなんか違う気がして、もっと――もっとほかの言葉を探してた。でも、見つからなかった」
 その告白に、涙腺が緩む。
 なんだか、ものすごくツカサが苦しんでいたような気がして。
 私はツカサの背中に腕を回し、「大丈夫だよ」の意味をこめてぎゅっと抱きしめる。
「本当に、悪い……」
 ツカサはそう言うけれど、想われている実感や大切にされている実感、それはいつだって感じることができた。今、こうしている瞬間にだって……。
 でも、こういうことも言葉にしないとわからないことなのかもしれない。
「……ツカサ、大丈夫よ? ツカサは好きとは言ってくれなかったけれど、いつだってキスをしてくれたでしょう? 私が好きと言うたびに、ツカサはキスをしてくれたでしょう? だから、気持ちは通じてたよ」
 今、ほんの少し嘘をついた。
 キスで想いが伝わっていたのは本当。でも、「大丈夫」はちょっと嘘。
「好き」という言葉をまったく欲してなかったわけではない。伝わってはいたけれど、「好き」という言葉を口にしてほしいとも思っていた。
 でもそれは、「嬉しい」と伝えたことでわかってもらえただろうか。
 ツカサから離れそっと見上げると、いつもより目の潤んだツカサが小さく唇を震わせていた。その唇がゆっくりと近づいてきて、そっと口付けられる。
 それは誠実で優しい、切実すぎるキスだった。
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