光のもとでⅡ
 会話なくマンションに着き、車はロータリーに停められた。
 エンジンを切ったツカサは車を降り、後部座席の松葉杖を持って助手席へ回ってきてくれる。
 ここで別れることになるのかと思いきや、ツカサはフロントに車のキーを預け、ゲストルームの前まで送ってくれた。
 ゲストルームの前まで来ると、ツカサは言いづらそうに口を開き、
「さっきは悪かった……。でも、この先も何度でも嫉妬すると思う」
 それは宣言ではなく、「それでも一緒にいたい」という懇願のように聞こえる。
 そんなこと、懇願されなくてもこちらからお願いしたいくらいなのに。
 むしろ、嫉妬してまで一緒にいたいと思ってもらえることが嬉しいというのに。
 ツカサはわかってない。
 ツカサに私の想いは伝わっていない。
「すっごくすっごく好き」のこの気持ちは、どうしたら伝わるんだろう。
 考えたのは一瞬。
 私はいてもたってもいられず、松葉杖を壁に立てかけツカサをぎゅっと抱きしめた。
 でも、きっとこれでも不十分なのだ。
 ツカサの不安は埋められない。
 ツカサの不安をなくしたい――
 手に掴んだセーターを引き寄せ、ツカサの頬に唇を寄せた。
 唇に触れた頬は冷たかった。
 私はそのまま抱きつき、
「ツカサ、好きよ。大好きだからね」
 そう言って離れると、今度はツカサに抱きしめられキスをされた。
 まるで私の気持ちを探るようなキスに、私は必死に応える。
 長いキスを終えても、まだ抱きしめられたまま。
 今度はちゃんと「好き」が伝わっただろうか。
 ツカサの「好き」はこんなにも伝わるのに、私の「好き」はどうして伝わらないのかな。
 私とツカサの違いって何……? ――あ……。
 自分からキスをすれば、想いが真っ直ぐ伝わるのだろうか。
 頬ではなくて唇に……。
 私は勇気を振り絞り、
「ツカサ、もう一度かがんでもらえるっ?」
 声をかけると、ツカサはすぐにかがんでくれた。
 さっきよりもキスしやすい体勢に、私は想いをのせてキスをする。
 唇に、そっとそっと口付けた。
 まるで、ツカサの心にキスしているみたい。
 ツカサから離れて目を開けると、ものすごく驚いた顔をしたツカサがいた。
 次の瞬間には、顔を真っ赤に染めて口元を覆う。
 そんなツカサを見たら私まで恥ずかしくなってきて、
「あっ、あの、今日は迎えに来てくれてありがとうっ。じゃ、また明日学校でねっ」
 私は逃げるように家へ飛び込んだ。
 どうしよう……今までにないくらい顔が熱い。
 私は家族が迎えに出てくるまでの間、尻餅をついた状態で両頬を押さえていた。
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