光のもとでⅡ
 す、と通った鼻筋の先には薄い唇。この唇に口付けられたのだと思うと、頬が自然と熱を持つ。私はこの唇の柔らかさもぬくもりも知っているのだ。
「いつまで瞑ってればいいわけ?」
「……もう少し」
 もう一度和服を着た全体像を視界におさめ、思う。
 今日のツカサの写真が欲しい……。でも、さすがに「写真を撮りたい」と申し出る勇気はない。願わくば、今見ているものが完全に、完璧に脳裏へ焼きつきますように――。
 私は名残惜しく思いながら、「ありがとう」と終わりを告げる言葉を口にした。
「……今の、なんだったの?」
 事前に訊かれるのは抵抗があったけれど、今訊かれる分にはさほど抵抗を感じない。
「……目、開けてるツカサは直視できないから……。でも、着物がすごく似合っていて、見たくて……だから……」
 隠すほどのことではないけれど、正直に話すのはやっぱり恥ずかしかった。言葉を続けられなくなると、
「翠、目、瞑って」
「えっ!?」
「……俺にやらせたんだから聞いてくれてもいいと思う」
「あ……うん……」
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