光のもとでⅡ
 目を閉じた瞼には優しいピンクの化粧が施され、すっと引かれた細いラインが目元を引き締める。瞼を縁取る睫はいつもより長く艶やかに主張していた。頬は白く滑らかで、うっかり手を伸ばしそうになる。そして――何を意識せずとも唇に視線が張り付く。
 キスをして、紅を引いた唇を台無しにしたい……。
 一度目を瞑り、野放しになった感情を半ば強引に遮断する。腹式呼吸を数回試み、数を数えて気持ちがフラットになるのを待ち続けた。
「……振袖もメイクも、似合ってる」
 やっとのことで口にできた言葉。
 翠はそっと目を開け、
「……本当?」
 そろそろとこちらを見る翠と目が合う。しかし、それと同時に互いが顔を背けた。
 ……何やってるんだか。
 そうは思っても、言葉にしがたい緊張の中にいることに変わりはなく……。
「なんか……恥ずかしいね」
 翠の言葉に何も答えることができずにいると、翠は全く違う話題を持ちだした。
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