光のもとでⅡ
「全然簡単じゃないんだから……。私がそう言うたびにツカサは一瞬身を引くし、長くはつないでいてもらえないし、がんばって隣に座ってもすぐに席を立たれちゃうし……。全然――全然簡単じゃないっ」
 すべて事実で自分の擁護などできるわけもない。
 悪い、とは思う。でも、俺もそこまで余裕なんてないから。
「だから……悪い。これからはそういうのしないから。しない予定。……でも、何度も言うけど、俺、どこまで自制できるのかわからないから」
「……自制って? あ……言葉の意味はわかるのよ? 国語辞典とかいらないからね?」
 こういう切り返しが翠だと思う。最後の国語辞典のくだりは間違いなく俺のせいだと思うけど……。
「自制しなくちゃいけないものは何?」
 翠らしい直球な質問が返され、俺は小さく深呼吸をした。そんな動作を挟まなくてはいけない程度には、緊張していた。
「つまりは俺も男だから、って意味」
 翠の顔を見ると、きょとんとした目をしている。
 だめか……もっと露骨な言い方をしないと。くそっ――。
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