光のもとでⅡ
「翠の希望どおり、駅での待ち合わせだったけど……何、不服なの?」
「……意地悪」
 こんなの不服とも言えなければ満足とも言えない。
 私の予定では、時計台のもとで待っているのは自分で、エスカレーターを上がってくる人をドキドキしながら見ているはずだったのだ。
 ツカサ相手では思ったように事は運ばない。それを痛感した待ち合わせだった。

 歩き始めると、
「今日の体調は?」
「どこもなんともないよ」
 私は携帯を取り出し、バイタルを表示させたディスプレイをツカサに向けた。
 それで納得したツカサは口を閉じ、会話は終わってしまう。でも、いつもこんな感じだからとくに何を気にするでもない。むしろ気になるのは人の視線。
 すれ違う女の子はチラチラとツカサを気にして通り過ぎる。それは学校でも変わらないけれど、学校でのそれよりもじっくりと見られている気がしてならない。そういうところを目の当たりにすると、やっぱり格好いいんだな、と再確認するわけで……。
「何?」
「えっ?」
「じっと見てるから」
「……ううん、なんでもない」
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