光のもとでⅡ
 確かに、音楽とカメラ、という分野は特殊ではあるだろう。それでも、
「それらがほかと大きく異なるわけではないと思う。どんな職業であっても、資格が取れたところで就職が決まるわけじゃないだろ」
 ごく当たり前のことを言ったつもりだった。しかし、翠は目をパチパチと瞬きさせて、
「目から鱗……。そっか、そうだよね」
 と、新たなことでも知ったような顔を見せる。
「それに、翠は静さんと契約しているんだ。ひとつはすでに仕事を得ているだろ」
「あ……」
 この、「きれいさっぱり忘れてました」感……。静さんに言いつけたくなる。
「それならカメラの勉強をしたほうがいいのかな……」
「だからさ、そうやって選択肢を狭める必要はないだろ?」
 こんな話をしながら三十分ほど休憩すると、翠が行きたがっていた雑貨屋に寄ってマンションまで帰ってきた。
 まだ夕方前だったこともあり、うちでティータイムにしようと話はしたが、翠はバスに乗っているときからどこかうわの空だった。
 もしかしたら、進路のことを考えているのかもしれない。
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