光のもとでⅡ
 八時過ぎにやってきた翠を俺は笑顔で出迎える。
「遅くなってごめんなさい。……機嫌、悪い?」
 上目遣いで訊かれ、
「これからプレゼントを渡そうかってところで帰られるとは思っていなかった」
 翠は申し訳なさそうな顔で謝る。そこへ畳み掛けるように、
「まさか誕生日を祝う日に、そんな顔で謝罪されるとも思ってなかったんだけど」
 絶対零度の笑顔と呼ばれるそれを向けると、
「そんなふうに言わなくても……」
 玄関に佇む翠は困り果てていた。その末、
「もう……どうしたら許してくれるの?」
「キスしてくれたら?」
「なっ――」
 翠が一歩引くと玄関ドアに突き当たる。俺はそれをいいことに、
「嘘。でも、キスはさせて」
 慌てふためく翠にキスをすると、翠の唇が少し震えていた。それに気づかないふりをして翠を部屋へ促す。
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