光のもとでⅡ
 その場に残ったのは私と秋斗さんのふたり。
 なんとなく少し気まずく思うのはどうしてだろう……。
 どこに視線を定めたらいいのかわからず、海へ向かってずんずん進む飛鳥ちゃんたちの姿を目で追っていた。すると、
「翠葉ちゃん、食後の散歩。ちょっとそこまで浮き輪を借りに行かない?」
「え……? でも、浮き輪なら蒼兄が……」
「浮き輪はいくつあっても困らないよ。沖へ持って行けばみんなの休憩ゾーンにもなるしね。浮き輪があれば浅瀬で泳ぎの練習もできるよ。どう?」
 確かに、浮き輪はいくつかあっても問題ないのだろう。何より、泳ぎの練習ができることに目がくらんだ私は、「行きます」と答えていた。

 秋斗さんと向かったのは、海辺に建つ別荘。その並びに、先ほどバーベキューの用意をしてくれたスタッフハウスなる管理棟があるという。そこでは、海で遊ぶためのものもレンタルしているらしい。
 それなら、蒼兄たちにもそう教えてあげればよかったのに、と思わなくもない。
「実はね、昼食の用意をしてくれているときに浮き輪の件は訊いてあったんだ。そしたら持ってきてくれるって言われたんだけど、翠葉ちゃんとふたりきりになりたかったからあとで取りに行きますって言っちゃったんだよね」
 それを聞いて、少し複雑な思いになる。
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