光のもとでⅡ
 今更、とは思った。でも、どうしても「おかえり」の言葉が聞きたかった。
 そんな俺の心を察したかのように、「おかえりなさい」と再度言われ、「ただいま」のあとに念願のキスをする。ただ一度、触れるだけのキスを。
 腕の力を緩めると、翠が追うようにその腕を取った。
「何……?」
「えと……」
 俺を見ていた目は途端に宙を泳ぎ、俺の胸元へと着地する。
「ツカサ……ぎゅってして?」
 何を言われたのか、と一瞬にして頭が真っ白になった。真っ白になった状態で、翠に言われた言葉を反芻させる。
「ぎゅっとして」とは……つまりは抱きしめて、ということでいいのだろうか。
 確信はなく翠の肩に腕を回すと、翠は自身の腕を俺の背に回した。次の瞬間には力をこめられる。
「翠……?」
 何が起こっているのか、と確認するために口にすると、
「……キス、して? ……私はツカサが好きだからね。ツカサだけが好きだからね」
 もしかしたら、これは翠の気持ちを表す一方法なのだろうか。
 そう思うと心があたたかなものに包まれる。
「……ありがとう」
 深く口付けることを許された気がして、思うままにキスをした。
 もう少しこのままでいたい。でも、照れ臭さもあるし、何より――。
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