光のもとでⅡ
 そんなにつまらなさそうに見えたのだろうか。
「別につまらないとは言ってないんだけど……」
 訂正を口にしたつもりだった。しかし、
「でも、楽しくはないのでしょう?」
 ここで、翠が隣にいることが嬉しいと言える性格ではない。言えたところで、
「知らない知識を得る機会は有意義だと思ってる」
 これがせいぜい。
 きっと、どれだけ一緒にいる時間が増えてもこういう自分は変わらないだろう。秋兄のようにストレートな物言いをできるようになるとは思えない。それに翠は付き合ってくれるだろうか。
 翠をちらりとうかがい見ると、
「ツカサが行きたい場所はどんなところ?」
 改めて訊かれたものの、すぐに答えられるものなどひとつしかなかった。
「動物園」
 小さな声で答えると、「動物園?」と尋ね返される。
 恥ずかしくなって顔を背けると、
「動物が好きなの?」
 と、顔を覗き込まれた。
 仕方なしに頷くと、翠は携帯で動物園を検索し始めた。
 そんなことをせずとも、近くの動物園くらい知っている。
「葉山動物園」と場所を示すと検索の条件を変え、アクセス方法を調べていた。
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