光のもとでⅡ
「今日、夕方に血圧数値が一気に下がったけど、大丈夫だったのか?」
「あ、わ……えと、大丈夫」
 言ってすぐに後悔する。
 大丈夫じゃない数値を見られたからこそ訊かれているのであって、今の質問は「大丈夫だったのかどうか」を問われているというよりは、何があったのかを訊かれているようなもの。
 今の返答では説明不足だ。
「あの、夕方の数値変動は貧血で――今はまだ大丈夫なんだけど、もう少ししたら大丈夫じゃなくなりそうで、大丈夫に戻すにはどうしたらいいのかちょっと考えてる……」
 つたない言葉で現状を伝えると、
「相談ならいつでも乗るよ」
 蒼兄のその言葉に、その場にいたみんなが食事を再開した。

 夕飯後、休む間もなくお風呂に入ると胃が不調を訴えた。
 原因は、プレッシャーという名のストレスだ。
 期日までに長ランとハチマキを作り上げること。そして、会計職と副団長の任務をまっとうすること。さらには、成績を下げないよう勉強を怠らない、という負荷まである。そのうえ、日曜日には佐野くんとダンスの練習をしなくてはいけない。
「う~……胃腸さん、ごめんね。どうにか切り抜ける方法を考えるから、もう少しがんばってほしい。今、戻したりするのはちょっと困るの。そんなところで体力を浪費している場合じゃないの」
 どれもこれも自分のわがままで、胃腸さんには申し訳ない限りである。
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