光のもとでⅡ
「もしかして……ワルツの代表だったの知らなかった、とか……?」
「まさかね」と優太先輩は笑うけれど、その「まさか」だった。
 ダンスで一番高い評価はトリプルA。
 藤宮では中等部からダンスの授業が始まるけれど、高等部になってもトリプルAの成績を持つ人は少ないという。
 そのトリプルAを中等部からずっとキープしているツカサがワルツの代表にならないほうがおかしい。
 話を聞いたから知ってるとか聞いてないから知らないとか、そういうレベルの話ではなかった。
「私、どうして気づかなかったんでしょう……。ダンス、ずっと教えてもらっていたのに……」
 自分の愚鈍さを紛らわすように苦笑を貼り付け優太先輩を見ると、今度は優太先輩がきょとんとした顔をしていた。
「優太先輩……?」
「あっ、ごめん。……あのさ、もしかしたら、俺と翠葉ちゃん話が噛み合ってないかも?」
 話が噛み合ってない……?
「……あの、どこら辺がどのように、でしょう?」
「俺が前回の紫苑祭で司がワルツに出たことを翠葉ちゃんが知ってると思ったのは、翠葉ちゃんが司と同じ境遇にいるからなんだけど……?」
 え……? 私とツカサが同じ境遇?
「あの……優太先輩も知ってのとおり、私、体育の授業は出ていないので――」
「うん、やっぱ噛み合ってないや」
「え……?」
「同じ境遇って言うのはさ、姫と王子だからって意味」
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