光のもとでⅡ
「……ツカサ、大学受験はいつ?」
「……なんでいきなりその話?」
「あ、えと……今日、風間先輩とそういう話をして――」
「そういう話って?」
 これはどこから話すべきだろう……。
 風間先輩がツカサに興味を持っているとか仲良くしたいとか、そのあたりの話は避けたほうがいい気がする。
「翠……?」
「あ、あのねっ、風間先輩も藤宮の医学部を受けるっていうお話を聞いたの。それで、風間先輩は普通の推薦入試だけど、ツカサはAO入試か指定校推薦枠じゃないかって」
 ツカサは納得したのか、「あぁ」といった表情になる。
「受験ならもう終わってる」
 ……え? ……私、今何を言われただろう……。
 聞き間違いでなければ「もう終わってる」と言わなかっただろうか。
「ツカサごめん、もう一度言ってもらえる?」
「もう終わってるけど、それが何か?」
「……終わっているの?」
「さっきからそう言ってるけど……?」
「それがどうした?」とでも言うかのような視線を向けられ困ってしまう。
 一瞬にして頭の中が真っ白になるくらいの衝撃があったのに、ツカサはどうしてこんなにも普通なのだろう。
「いつ……? いつ、終わったの……?」
「今月頭には合格通知届いてたけど……それが何?」
「合格した」という追加情報を得たのに「おめでとう」という感情がわいてこない。
 あまりにも驚きすぎて、何かを感じるのが難しいような、そんな感じ。
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