光のもとでⅡ
「ひとつは合気道?」
「そう」
「もうひとつはワルツ……?」
 ツカサは少し考えてから、
「さぁ、どうかな」
「……だって、ワルツは姫と王子の恒例行事なのでしょう?」
「それが恒例になっているだけであって、そうしなくてはいけないというルールはない」
「え……?」
「そもそも、どうして翠以外の人間と踊らないといけない?」
 真顔で言われて困ってしまう。と、
「あぁ、そうだった。翠は俺以外の男と踊るんだったな」
 どこか意地悪な響きを含む声音に肩身が狭くなる。
 そしたら、「知りたい」とわがままを通すこともできなくなった。
 ツカサは再度腕時計に目をやり、
「ほかには?」
 これで最後、とでも言うかのような言葉。
「……あの、訊きたいことじゃないのだけど」
「何?」
 いつもより優しい問いかけに、今なら言えるかな、と魔が差した。
「明日、応援に立つことがあったら――写真……撮ってもいい?」
 ツカサは面食らったような顔をしたけれど、すぐに表情を改めた。
 その視線に理由を求められている気がしたから、
「……今日の応援合戦、とても格好良くて……写真、欲しいなって……」
 やっぱり返り討ちに遭うだろうか。不安でドキドキしていると、
「それで帳消しにできる?」
「え……?」
「今日泣かせたの……。それで帳消しにできるならかまわない」
 まさかそんなふうに言われるとは思ってもみなくて、一瞬絶句してしまった。
「いいの……? 本当にいいの……?」
「……帳消しになるならかまわない」
「なるっ! なるよっ! 帳消しになるっ!」
 思わず大きな声を発すると、「喜びすぎ」と窘められた。
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