全部、抱きしめて
「オレもたまには、違う女助手席に乗せようかな」

大瀬良さんの言葉に胸がズキンと音を立てた。

だけど、あたしは素直になれず、

「乗せればいいじゃないですか?」

そんなことを口走っていた。

嫌なくせに。ううん嫌というレベルではない。

だけど、嫌という言葉以外見つからない。

「じゃあ、 明日会う話はなしでいいよな? オレ会社内やら取引き先の子から声かけられてるんだよ。明日はその誰かと会うから」

「どうぞどうぞ。あたしも合コンの誘いがあって、まだ返事してなかったんです。明日は合コン参加しますから!」

「あぁ。互いにいい週末になるといいな」

「そうですね!」

合コンに誘われたなんて真っ赤な嘘だ。
あたしの精一杯の見栄。

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