全部、抱きしめて
「あぁ。かなり前から知ってたよ」

長谷部さんが得意気に言ったその時、ピーッと笛の音が聞こえたきた。

あたしはホッとしてしまう。
長谷部さんが、みさきちゃんに直也との事をあることないこと面白がって言うんじゃないかとそんな気がしていたから。

「大瀬良さんとの件は、今度ゆっくり話を聞かせてもらいますからね」

「はいはい」

みさきちゃんとこんな会話をしている間に試合が始まった。

数分後、すぐに直也がシュートを決めた。

「やったー!」

あたしは自分の事のように喜ぶ。
みさきちゃんと長谷部さんとハイタッチしていたら、

「ナイスシュー、直也」

そんな声がどこからか聞こえてきた。
それも女の人の声だった。

前列にいたあたしは後ろを振り返ったけど、誰が直也と呼んだかは分からなかった。




< 154 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop