全部、抱きしめて
「なんかさ、かおりとはその頃、完全にうまくいってなくて、家に帰る気になれなくて潤の家に泊まったんだよな」

「......えーっとつまり、かおりさんが直也と女社長との事を前々から疑ってとかじゃなくて、朝帰りしたから浮気したと思われてるかもって話?」

「そいう事」

あー、もう。
何だか頭が混乱している。

偶然が偶然を呼んで、離婚に至ったみたいな感じね。

「朝帰りしてすぐだったよ。かおりに離婚届渡されたのは。いざそうなるとけっこうヘコんだような、ホッとしたようなぐちゃぐちゃした感情が入り混じってた」

直也は真面目な口調で続けた。

「今まで何不自由なく暮らしてきたオレにとっては、離婚はけっこう大きな挫折だったような気もするな。まぁ。挫折っていう言葉の使い方間違ってるかもだけど」

何となくだけど、直也の気持ちが分かるような気がした。
< 192 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop