全部、抱きしめて
長谷部さんは笑顔で返事をした。


「頼み事って何ですか?」

総務部の事務所を出て、大瀬良さんに聞くと、「詳しくは会議室で」と、素っ気なく答えるだけだった。


会議室に着くなりいきなり大瀬良さんにキスをされた。

両腕を掴まれ、抵抗出来ない。

「......ん....っ」

バカバカ! 反応しちゃダメだ!

微かに残っている理性を保ち言い聞かせる。

あたしは意地で大瀬良さんの口内に舌を絡ませることはなかった。

時間にしてどれくらいだろう?
5分くらいして、大瀬良さんの唇が離れた。
掴まれていた腕もほどかれる。

「いきなり何するんですか!」

あたしは声を荒げて言う。

「何ってキスだろ?」

「そいうことじゃなくて、ここ会社の会議室ですよ? 分かってますよね? 」


「あぁ。分かってるよ」


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