天使が舞い降りる。



私の問いかけに、サイは首を傾げる。


「あの日事故に遭ってそれで目が覚めたの、今日が初めてだしな……ねえ、涙。今日何日?」


「え?7月25日」


「事故に遭ったのは23日…」


つまりサイは、死んで2日後の今日、私の目の前に現れた…。


なんで、私だったんだろう…


どうして奈々子ではなく、サイは私の前に現れたんだろう…





―ピト…


「ん?」


サイの手に自分の手を重ねてみる。


触れる……けど、人間の温もりを全く感じない。


温かいとか冷たいとか…全然何も感じない。


―『即死だったって!』


本当に……サイは死んだ人間なのだと、改めて感じた。


普通、幽霊って、人には見えないし、触れないものだと思っていたけど……


いや、サイの姿を見れるのは、たぶん私だけ。触れるのも、もしかしたら自分だけかもしれない。





「悲しく、ないの…?」


サイの手に触れたまま聞いてみる。






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