ルージュのキスは恋の始まり
 嫌がらせとしか思えない。

「そんなにキスがしたいならあなたがモデルやったらどうですか?宣伝費も節約出来ますよ」

 私の嫌味にも社長は動じない。

「そんなにさっきのキス良かった?お前、弱々しい感じだけど、意外と度胸あるんだな。俺にたてつく女なんて初めてだよ。それから俺の名前は龍神玲王だ。自分の会社の社長の名前くらい覚えておけ」

 フッと微笑すると、龍神社長は私の腕を離した。

 やくざみたいな名前。

「いかにも俺様って感じの名前であなたに合ってるわ!龍神社長」

龍神社長からやっと解放されドアをこれでもかというくらいバタンと大きな音をたてて閉めると、ラボに向かって歩き出す。

 ああ、今日に限ってはヒールを履いてくれば良かった。

 腹立たしい。
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