ルージュのキスは恋の始まり
17、私の中の変化 ー 美優side
「このまま外へ出るぞ。変な真似をすれば、痛い目に遭う」

 佐藤はポケットからカミソリを取り出して私にほんの一瞬見せると、指にはさんだ。

 そして、その指は私の腰に添えられる。

 言われるまま腰を抱かれるようにしてエントランスを歩く。

 まるで悪夢だ。

 地面を歩いている気がしない。

 意思を奪われたまま、人形のように佐藤に歩かされる。

「もたもたするな。痛くしないとわからないのか?」

 佐藤がカミソリを持った指を腰に押し付ける。

 逆らえば迷わず切るとの意思表示だ。

 怯えながら何とか足を動かす。

 声を出して助けを呼ぶ余裕なんてなかった。

 ただただ佐藤が怖くて・・・・。

 玲王、玲王と心の中で叫び続けた。

 エントランスを出ると、佐藤が手を上げてタクシーを停車させた。
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