ルージュのキスは恋の始まり
 亜紀ちゃんの思考についていけないのか、井上君は反論する。

 だが、私も井上君も口では亜紀ちゃんに勝てないのだ。

 亜紀ちゃんは有名大学の院卒のリケジョだけど、彼女の思考はぶっ飛んでいる。

「井上君、研究者ならその身を捧げなさい」

 不敵な笑みを浮かべながら亜紀ちゃんは井上君に顔を近づける。

 キスでもするの?と思いたくなる距離。

 亜紀ちゃんの行動に驚いた井上君の表情が固まる。

「キスすると思った?」

 亜紀ちゃんは意地悪く笑うと、狼狽えてる井上君の口に口紅を塗っていく。

「きゃあ、キレイよ、井上君。お姉さん嬉しい!」

 亜紀ちゃんはかなり興奮している。

「誰がお姉さんですか、もう!しかも、僕もレッド系じゃないですか。せめてベージュ系にしてください。あっ、でも潤ってて唇の皺も消えてプルンとしてる。これ、いつまでもつんだろう?」
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