ルージュのキスは恋の始まり
「暇人が」

 吐き捨てるかのように呟き、この女を抱き上げる。

「どけ。俺はお前らの顔を覚えてる。仕事をしないなら首にするぞ」

 俺は冷ややかに告げる。

 すると、俺の言葉に怯えた社員たちは一斉にここから離れた。

 手間かけさせやがって。

 それを横で見ていた片岡がフッと笑った。

「お見事」

「お前も仕事しろよ」

 ギロッと片岡を睨み付ける。

「してますよ。あなたの見張り」

「・・・・」

 呆れて物も言えない。

 こいつをずっと相手にすると、今度は俺が過呼吸になりそうだ。
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