いつだってそこには君がいた。



そう提案してくれた沙月ちゃんに私もすこしだけ笑いかけた。


頑張って同じ学校に入ったのだから、クラスが離れたってどうってことない。


会いたくなったら、会いに行けばいい。
会いに行ける距離にみんないる。


去年一年間頑張った自分が用意してくれたこの環境なのだから、謳歌しなきゃ勿体無い。



「そろそろ行くか」



結城くんがそう言って、私たちは階段を登った。
四階建ての三階に一年生のクラスがある。
階段を右に行くと一番奥に一組があり、左に行くと一組奥に六組があるようだ。


やはり、一番端と端。ふたりと別れて結城くんと同じ教室を目指す。


綺麗な木目調の廊下。天井や壁は白く、当たり前だけど窓からの景色も中学の時とは違う。


耳に入る音も、心なしか異なっているように感じる。文字通り、新境地での生活が始まる。



「そんな落ち込むなって」


「大丈夫、結城くんいるし」


「そうそう、俺がいるし」


「ふふふ、友だちできなかったらずっと一緒にいてね?」


「任せといて」



他愛ない会話をしているうちにたどり着いた教室。
既に開いていたドアから中に入る。
黒板には座席表が貼ってあって、それを見た。


私はちょうど教室の中央あたり。
結城くんはベランダ側から二番目の列の、後ろあたり。


名前の頭文字を鑑みると、妥当な位置だろう。
とりあえず席について、持っていたかばんを机の横にかけた。



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