いつだってそこには君がいた。



「おはようっ、ふたりとも……っ」


「学級委員って本当大変そう」


「大変だよ、ても引き受けちゃったから頑張らなくきゃ」



沙月ちゃんがにっこり微笑み、高橋くんが「じゃあ引き続き頑張れよ」と声をかけてくれて、ふたりが行ってしまった。


楽しそうに話すそのふたりの後ろ姿に胸がしぼんでいく。私も、高橋くんと並んで歩いて話したい。


卒業式でふとりで話したときのことを思い出すと、今でも嬉しくて心が震えるんだ。あの時と同じように、リアルに思い出せる。


だからなにかモヤモヤしたことがあると、記憶を辿ってあの幸せだった瞬間に想像の中で舞い戻る。


もらった第二ボタンは初詣のときに手に入れたお守りの中に入れて、今もスクールバッグにぶら下がっていたりする。


ああ私、今ものすごく高橋くん不足だ……。



***



「ねぇ、結城くん彼女いるって本当?」



昼休み、トイレの個室にて、用を足していると聞こえてきた話題に目を見開いた。
思わず聞き耳をたてると、すぐそばにいる女子たちの言葉を待つ。


なぜだかドキドキしている自分がいる。



「あーあの同じクラスの地味な子?」


「名前は確か……日高優梨、だっけ?」



思わず声が出そうになって口元を手でおさえた。どうしてそんなことになっているのか謎すぎて、頭が混乱する。


たぶんトイレにいるのは女子三人。私がすぐそこの個室にいることなんて、微塵にも考えてはいないのだろう、話は続く。



「結構噂になってるよね。でもなんで結城くんの相手があの地味子?」


「日高さんが学級委員になったから結城くんも立候補したって聞いたよ」


「マジ?」



結構噂になっている?どうして?


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