うっかり持ってきちゃいました 2
うっかり兄も来ちゃってました
 異世界からこんにちは。どうも皆さんお久しぶりです。
 うっかり召喚されっぱなしの美少女女子高生、桜井莉子です。
 え?誰だそれって?ヒドイ!私の身体だけが目当てだったのね!

「そんな台詞を吐ける程、ご立派なのかお前の身体は!」
「きゃーフィル君セクハラー!いやらしー!男子高校生ー!」
「なんてことを……!というか最後のは罵倒なのか。哀れだぞダンシコウコウセイ」
「きゃーフィル君が私の身体を狙ってるー!お師匠様ー!」
「もはや言葉の暴力だ……!謂れの無い暴力が俺を襲う……家庭内暴力反対……!」

 あら、フィル君が床に『たすけて』と書き始めましたよ、皆さん。ダイイングメッセージですかね、誰からの身の危険を感じているのかな?ふっしぎー。


 その日、フィル君と私はバイトがお休みで、市場に買い出しに来ていた。

「ねーお師匠様の買い物メモ、『ミルク、パン、木彫りの熊』ってあるんだけど。何に使うの、つうか売ってるの?木彫りの熊」
「……お師匠様には深い考えがあるんだよ、多分」

 私の疑いの目に、苦し紛れになんとかお師匠様をフォローするフィル君。

「深い考え。アルさんに。へえええぇ」
「……あるといいな、多分」

 地味な戦いに勝った私。二人でメモに書かれた雑貨屋さんの棚を探す。

「あった!ほんとに熊!鮭咥えてる!」

 棚の上に飾られていたそれに手を伸ばしたなら。隣からすっと出て来た手が私より先にそれを掴んだ。フードを被ったおそらく男の人。

「ちょっとおお!この莉子様の行く手を遮るとは不届き者め!」
「大袈裟な……」

 怒りを込めて横取り野郎を睨みつけようとした私に、フィル君が呆れ顔で止めようとして。

「……りこ?」

 横取り野郎がボソッと呟いた。

「はぁん?私を呼び捨てにして良いのはアルさんとフィル君と店長と隣のおじさんおばさんと殿下と市場のおっちゃんと」
「すげえ居る、すげえいっぱい居るから!」

 騒ぐ私とフィル君の前で、横取り野郎は深く被っていた上着のフードを外した。そこから出て来たのは黒髪の、よく知った顔で。

「……おにいちゃん?」
「……ほんとに、莉子だ」


 桜井莉人ーー私より5歳年上の大学生の兄、がそこに居た。
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