幼馴染みはイジワル課長
夢から現実に戻ったような気分…




「俺の下について早く仕事を覚えろ。俺は手加減しないし甘えもなしだ」

「はい…」

「女だからって容赦しないぞ。ミスしたり時間に遅れるようなことは許さない。わかったな」

「はい、わかりました…」


怖い…別に怒られてるわけじゃないのに、何だかすごく怒られてるような気持ちになるのはなぜ…?




「15分後ミーティングがあるから俺と同席しろ。それまでにここに書いてあるものを資料室から持って来い」

「は、はい!」


課長から渡されたメモを受け取り、私は資料室へ小走りで向かった。


失敗は許されない。時間も守らないと怒られるっ

資料室に入ると、私はとにかく必死でメモに書いてある資料を探した。メモには3つの資料名が書かれている。




「え、っと…ヒマワリ印株式会社…あ、あった!」


とりあえず1つめの資料を発見。そして2つめの資料も見つけて残るは1つだけ…

早く資料を見つけて課長の元へ戻って褒めてもらいたい。「早かったな」と言われるだけで嬉しいから…




「あった!」


3つめの資料を見つけ出すことが出来た。けれど、その資料は棚の一番上にあり私はつま先立ちをして手を伸ばす…

ギリギリのところで資料を掴めず、歯を食いしばって思いっきり手を伸ばした。



くっ…こういう時思うんだ…よね。

もうちょっと背が高ければ良かったって…





「…大丈夫?」

「えっ…」


ボトッ


突然後ろから手が伸びて来て、驚いた私は持っていた資料を床に落としてしまった。後ろを振り向くと資料を持った持田さんが立っていた。

持田さんは私より2年先輩の正社員で、可愛らしいルックスと人懐っこい見た目からか社内では結構人気者らしい。





「ごめん!驚かせる気はなかったんだけど…」

「い、いえ…」


持田さんはすっとしゃがみ込んで、落ちた資料のファイルを拾ってくれる。




「すいません…ありがとうございます」

「ううん。取ろうとしてた資料ってこれ?はい」


私が取れなくて苦戦していた資料を手を上げて余裕で取ると、持田さんは私に笑顔で差し出し私はペコッと頭を下げた。




「ありがとうございます!いいな~私も持田さんくらいとは言わないけどもう少し背が欲しいです」


歩未ちゃんや親友の杏南も多分同じくらいの身長で、私より数センチ高い。スラリとしてちょうどいい女性体型の3人に比べ私はなんともバランスの悪いこと…




「桜花ちゃんはその身長だから可愛いんだよ」

「いや…背が小さいのは悲しいんですよ?足は短いしすぐ太るし…」


昔からちょっとコンプレックスだったりするんだよね…




「太ってないじゃん」

「脱ぐとすごいですコレが。特にお腹が…」

「へ~それは一度見てみたい♪」


ニヤリとする持田さんに、私はツッコミを入れるように腕を軽く叩いた。ケラケラと笑う私と持田さんの声が資料室に響きわたる。




「そういえば課長と仕事でペア組むんだって?」

「あ…はい。そうみたいですね…」


もう持田さんの耳に入ってるってことは…社内の特に女性社員たちも知ってるってことかな?

いずれ知られることだけど、女性社員にすごく人気のある課長の下に私のような新人がつくなんて聞いたから、きっと陰口叩かれるに決まってる…そう考えるとやっぱり課長とは仕事では距離を置きたい。




「課長は仕事できるけど厳しい人だからな…多分大変だよ。大丈夫?」

「そうですね…でも断れるわけじゃないので精一杯頑張るしかないです」
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