【短編】英国紳士は甘い賭け事がお好き!

「母の命令は、鳥かごの中の私には絶対ですので」

「イギリス人は賭けが好きです。私と勝負してみませんか?」

「賭け?」

「私が勝ったら、泣くのを止めて一晩、私のモノになって下さい」


「一晩、私のモノ?」

一晩、デイビットの命令を聞くと言う事かと美麗は認識した。と言うのも、美麗は恋愛経験も、恋の駆け引きも知らない。これが一夜の誘いだとは夢にも思っていない。箱入り娘なのだ。

「それで、私が勝ったら?」

「この鳥かごから、自由にしてあげましょう」

 自信満々にそう笑う。その自信が妙に鼻に付く。この人は自由も、名誉も名声も富もある。何一つない自分への驕りと優越感に浸っているだけだろう。そう考えると甚だしい。その余裕が美麗をさらに劣等感の籠に閉じ込める。


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