此音忌譚 ―コノオトキタン―



 呼ばわれた己の名に、主は肩を竦めた。



「逃げられてしまいましたね。

 いや、愛情と云うのは是ほどまでに篤いものとは」



「喰えなかったんだね、今日は」



 幼い声が、主の自嘲を揶揄してみせる。



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